近年、触媒といえば遷移金属が中心であり典型金属はあまり顧みられていない。しかし、後者は安価で、しかも国内でも産出するものが多くこれを触媒反応に組み入れる試みは重要な課題と考えている。本研究では特に有機アンチモンハライドがオキシランなどの環状エーテルに特異的に作用し、これが有機スズ化合物と相補的に、しかも触媒として温和な条件で使用できることを明らかにした。 1.シクロ付加反応 初年度においては、おもにイソシアナートやカルボジイミドとモノ置換オキシランとのシクロ付加反応について検討したが、ヘテロクムレンとしてケテンを用いると、有機スズ触媒(Bu_2Sn_2-HMPA錯体)がジオキソラン誘導体を生成するのに対し、Ph_4Sbを触媒とし非極性溶媒中で反応を行うことにより、医薬中間体としても重要なブチロラクトンを選択的に得ることが可能となった。またオキシランと類似の環状エーテルであるオキセタンとケテンとの反応でも同様の結果が得られ、6員環ラクトンが45℃という温和な条件下、高収率で生成した。 2.オキシランとアミンの反応 オキシランをアミンで開環する反応は天然物合成につながるアミノアルコールを合成する方法として一般的、かつ重要なものであるが、過剰のアミンを用いて水の存在下、高温条件を必要としている。これに対しPh_4SbOT_f(T_f:トリフラート)を触媒として用いると、等モルのアミンで、しかも完全に非水条件下においてすみやかに付加反応が起こる。 3.有機スズ化合物による等モル反応 環状エーテルと有機スズハライド錯体により系中で形成されるω-ハロアルコキシドスズ化合物を別途合成し、これに対する塩基の作用を明らかにするとともにヘテロ環化合物を合成する手段を開発した。
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