有機スズハライド錯体と有機アンチモン化合物が、オキシランやオキセタンのような小員化合物を特異的に活性化することを見い出し発展させた。これらを触媒とすることの有利な点は、系がほぼ中性に保たれるため、本来不安定で重合や異性化をおこしやすいこれらの小員環エーテルの反応が高収率高選択的に進行することである。また典型金属化合物を本研究のように触媒とする結果も従来にあまり認められない事実も注目に値する。以下に結果の概要を示す。 1. ヘテロクムレンとモノ置換オキシランとの付加方向制御 Bu_2Sul_2と塩基との錯体を触媒とする場合には、オキシランは置換基の付かない側で選択的に開裂し、3位と5位に置換基を有するヘテロ五員環生成物が得られる。反応は室温で発熱的に進行し、高収率である。触媒の存在しないときは全く付加は生起しないことから触媒活性の高いことが明らかである。これに対し、全く同じ基質に対してPh_4SbIを触媒とすると、ほとんど同じ条件下において、オキシランの開環方向が反対となる。すなわち、オキシランは置換基の付いた側で選択的に開裂し、3位と4位に置換基を有するヘテロ五員環が得られた。特にヘテロクムレンとしてケテンを用いるとオキシランの開環方向に加え、ケテンの反応位置も変わり生成物が全く変化する。このように両触媒は全く同じ基質に対して異なった作用をし、相補的に用いられることが判明した。 2.アミンとオキシランの反応によるアミノアルコールの合成 Ph_4SbOT_f(T_fトリフラート)を触媒とすれば、オキシランとアミンの反応が完全に非水の条件下で、しかも等モルの基質間で完全に進行した。 3.1、2の反応はオキシランだけでなくオキセタン誘導体に適用することも可能である。
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