研究概要 |
含酸素ヘテロ環化合物は天然物中に広く存在し, 生物活性作用や芳香成分などの有用な性質を示す物が多い. 本研究は新しい機能の発現が期待される含酸素ヘテロ環化合物の新合成法の開発と応用を試みた. 本年度は次の2課題について研究した:(i)α,β-縮環-γ-ラクトン関連化合物の新合成法の開発 (ii)クマリン誘導体の新合成法の開発. (i)これらの化合物の合成中間試剤として, きわめて有用なα-ホスホノーΔ^<α,β>-ブテノリド(1__〜)の開発を行った. (1__〜)に求核試剤のマイケル付加, 分子内Wittig反応を行わせることにより, 高収率でα,β-5員環ならびに6員環縮環-γ-ラクトンが1段階合成出来ることを見出した. この合成手法を用い, 制ガン作用を有するシクロサルコマイシンの簡便合成に成功した. また種々の同族体の合成にも成功した. それらの制ガン作用が期待され, 現在検索中である. 従来の, β-縮環ラクトンの合成は困難であったが, 本手法の開発により可能となった. その展開が多いに期待される. (ii)O-ヒドロキシベンツアルデヒド類とα-ホスホノーγ-ラクトン(2__〜)の反応より, 3位にヒドロキシエチル基を有するクマリン(3__〜)を高収率で得た. 3__〜の臭素化, 続いてDBU存在下で種々のジエノフィルとのDiels-Alder反応により, 高収率で3,4-縮環クマリンが生成することを見出した. 2-ホルミルー5-ペンチルレゾルシノールを出発物質として, 本手法(2__〜との反応, 臭素化, Diels-Alder反応)を適用することにより, 麻酔作用, 鎮痛作用など興味ある生物活性作用を有するカンナビノール前駆体(4__〜)を簡便合成出来ることを見出した. 以上のように, いずれの課題においても, 従来多工程を必要としたり, 合成困難であった化合物の合成を新しい手法を開発, 導入することにより容易または可能となった. このように, 当初の計画を順調に達成することが出来た.
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