微生物の酵素による高選択的脱水素(酸化)と天然、非天然型糖質のもつ分子構造的特徴と酸化反応における酵素のもつ分子識別能及び選択性との間の相関に対し、基礎的知見を集積するとともに、化学の側から見た酵素反応について一段階反応から多段階反応まで含めて考察を行った。 はじめにグルコースオキシダーゼ及びガラクトースオキシダーゼの基質特異性について検討を行い、生成物の分析を行った。その結果ガラクトース、マンノース及びキシロースはグルコースオキシダーゼにより相当するラクトンに高収率で酸化された。メチルD-ガラクトシドのC-6ヒドロキシメチルはガラクトースオキシダーゼによりアルデヒド中間体を経て相当するウロン酸に酸化された。分子中にガラクトピラノシル残基を有するオリゴ糖もガラクトースオキシダーゼにより酸化された。これとは対照的に、ガラクチトールやヤシリトールのようなある種の糖アルコールはガラクトースオキシダーゼにより酸化されてL-ガラクトースやL-キシロースのようなL-糖が選択的に得られた。この場合、生成したL-ガラクトース及びL-キシロースはピラノース環を形成することにより安定化し、これ以上の酸化が進行しないものと考えられる。 もし糖質が好気的条件下で資化されるとすれば、全反応は酸化反応(多段階的脱水素)とみなせるであろう。特定の菌体を用いて高選択的資化を、従来の化学的手法では困難な炭水化物の選択的分離に適用した。D-アロース資化菌、Rhodotorla rubra KM603、Trichosporon cutaneum KM609及びAcremonium sp.KM608を活性汚泥より集積培養法により得、糖質のC-2エピマー、α、β-アノマー及びDL-混合物の分離を行った。さらに他の特定の微生物について選択的資化性の検討を行った。
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