1.2-不斉誘導反応による鎖状化合物の立体制御

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 62550623
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 佐藤 史衛 東京工業大学, 工学部, 教授 (50016606)
• 研究分担者: 小林 雄一 東京工業大学, 工学部, 助教授 (90153650)
• キーワード: 不斉合成 / フリルアルコ-ル / エノラ-ト / プロピオン酸エステル / 4級炭素

研究概要

フルフラ-ルとカステルエノラ-トの付加反応によって大量に合成した3-(2-フリル)-3ヒドロキシプロピオン酸エステル(1)をシャ-プレス不斉エポキシ化反応を用いて速度論的光学分割をおこない、1の光学活性体を合成した。1に塩基を作用させアルキル化させたところ、1に存在するヒドロキシル基によって高選択的に1.2-不斉誘導され、ヒドロキシル基とアルキル基がアンチ型の立体配位を有したプロピオン酸エステル誘導体(2)が高収率で得られた。化合物2に、塩基を作用させエステルエノラ-トとした後更にアルキル化させたところ、このアルキル化も高選択的に進行し、立体配位の決った4級炭素の構築が可能であることを見出した。得られた4級炭素を持つ化合物は、エステル基およびフリル基という炭素鎖を伸長できる官能基を有しており、種々の応用が可能であることを明らかにし、生理活性化合物合成の中間体を合成した。化合物2きのヒドロキシル基を酸化しケトン体に変えた後、1.2-不斉誘導反応をおこなうことを計画し、2の酸化条件を種々検討したが、収率が悪く、このプロジェクトは断念した。抗生物質チェナマイシン合成の鍵中間体を合成することを目的として、化合物1からエノラ-トを発生させた後、ヘテロ原子置換基を導入することを次に試みた。この研究は、未だ途上であるが、収率よく反応する条件を見出すに至っており、今後更に研究を続けることを予定している。また、この知見を化合物2に適用することも予定している。

研究成果

• [文献書誌] Y.Kitano,M.Kusakabe,Y.Kobayashi,and F.Sato: "Preparation of Optically Active 2-Thienylcarbinols by Kinetic Resolution Using the Sharpless Reagent" The Journal of Organic Chemistry. 54. 994-996 (1989)
• [文献書誌] M.Kusakabe,Y.Kitano,Y.Kobayashi,and F.Sato: "Preparation of Optically Active 2-Furylcarbinols by Kinetic Pesolution Using the Sharpless Reagent and Their application in Organic Synthesis" The Journal of Organic Chemistry. 54. 2085-2091 (1989)
• [文献書誌] M.Kusakabe and F.Sato: "A New and Practical Synthesis of Four Possible Stereoisomers of 3-(2-Furyl)-3-hydroxy-2-methylpropionate" The Journal of Organic Chemistry. 54. 3486-3487 (1989)
• [文献書誌] T.Ito,S.Okamoto,and F.Sato: "Practical Method for Synthesis of Optically Pure Propargylic Alcohols" Tetrahedron Letters. 30. 7083-7086 (1989)