修飾ロジウムポルフィリンにおける多点相互作用を利用したアミノ酸の二点固定およびアミドの加アルコール分解における二官能触媒作用を検討した. 1.〓-および〓-位に〓-ヒドロキシー1-ナフチル基をもつオクタエチルポルフィリンのRh(III)-Cl錯体はアミノ酸およびそのエステルと1:1の付加体を形成するがこれにはRh(III)-NH_2-配位結合の他にOH-CO_2H(CO_2CH_3)の水素結合が含まれている. 軸配位子をClから有機配位子(-CH_2COCH_3)に変換するとアミノ酸やそのエステルとの付加体の形成は可逆的となる. アミノ酸エステルとの付加体においては配位結合の寄与は6.7Kcal/molであり水素結合の寄与は2.1Kcal/molである. このような二点相互作用を利用することによりアミノ酸エステルとアミンの混合物から前者のみを付加体形成に導くことや〓-アミノ酸と〓-アミノ酸の混合物から前者のみを付加体形成により抽出すること等が可能となった. また〓-と〓-位に〓-ヒドロキシー1-ナフチル基をもつ光学活性体を用いることにより上述の二点認識の他にアミノ酸側鎖の関与する三点認識が可能となりアミノ酸のキラル識別が達成できた. 2.上述のロジウム錯体をベンゼンーメタノール中で種々のアミドに作用させるとアミドのアルコクシスが容易に進行する. 例えばp-ニトロアセトアニリドからはメチルアセテートとp-ニトロアニリンが生成する. この反応においてはポルフィリンのRh(III)部位と水酸基が必須である. ^1HNMRを用いた検討ともあわせてこの反応では基質のカルボニル基がルイス酸としてRhに配位し分極させることによりメタノールの求核攻撃を助けるが脱離するアミンに水酸基からプロトンが供与されることによりこの過程が非常に促進される. このようなルイス酸-一般酸の協同作用はペプチド加水分解酵素であるカルボチシペプチダーゼAで認められているものと同じものである.
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