研究概要 |
本研究では, 新規の有機電導物質の開発を目指して, 以下に記す種類のタイプの電子供与体及び受容体の分子設計を行った. 最初に, 良好な電子供与体として興味がもたれるベリ位カルコゲン架橋縮合芳香族化合物に着目し, ナフタレン, アセナフテン, フルオランテンを母体とする新規化合物の合成に成功した. さらに, ナフタレンのカルゴゲン架橋から共役系が発達してTTF類似骨格をもつ化合物の合成にも成功した. この際のカルコゲン種としては硫黄, セレン, テルルの全てを含む. これらの化合物の物性測定の結果, 中程度の電子供与能を有し, その大きさが分子骨格中のカルコゲン種に依存していることが分かった. しかしながら, その分子錯体の電導度はカルコゲンに依存してなく, 半導性から金属性の広範囲に渡っている. 次に, 電子供与体としてまだ未開発の非対称系に着目し, 4-カルコゲノピランー1, 3-ジチオルの母体及び種種の誘導体を設計した. その中でも, セレノピラン誘導体は対称体に匹敵する程の高電導TCNQ錯体を与えることが分かった. 一方, 電子受容体としては共役型チオヘンTCNQに着目し, 種種の化合物を合成した. これらはTCNQ程良好な電子受容性を持たないが, 共役によりオンサイトクーロン反発を避けることができる. それ故, その分子錯体のなかには異常に大きな金属性をしずめるものが数多くみられた. また, TCNQより強い電子受容性の発現を計るためチオヘンTCNQ化合物の分子設計を試みた. この分子は中性状態が不安定でアニオンとして単離した. これを用いて電導性TTE錯体の合成に成功した. 今後, 本研究でえられた新規化合物及びそれらの分子錯体の構造と物性の解明を行い, さらに優れた電導物質及び機能材料の設計に役立てる予定である.
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