1)高分子集合体触媒による立体選択的エステル加水分解反応 水溶性高分子であるポリエチレンイミン誘導体にヒスチジンを含む光学活性な触媒を直接結合した高分子集合体触媒を合成し、機能性材料を開発する観点から、粘度、蛍光挙動、およびエステル加水分解反応を試みた。高分子触媒の反応性から、直鎖および分岐ポリエチレンイミン誘導体の立体選択性を比較検討した。さらにこれらポリマードメイン中でのジペプチド触媒による加水分解反応も合わせて検討し、基質の構造に及ぼす反応性と立体選択性の関係を考察した。 2)ハイブリッド分子集合体触媒による立体選択的エステル加水分解反応 合成二分子膜および界面活性剤ミセルからなるハイブリッド分子集合体の存在下、ジペプチド触媒によるアミノ酸基質の加水分解反応を検討した。ハイブリッド分子集合体の構成分子の混合化を変化させたところ、これら集合体は用いた触媒のコンホメーションを自在にコントロールでき、高立体選択性の発現を可能にすることがわかった。特に、長時間安定に構造を保持し、キラルな反応場を提供する光学活性な二分子膜ベシクルを含む系の場合にかなり有効であり、ミセル80mol%/ベシクル20mol%付近で理想的な立体選択性が認められた。これら立体選択性は用いた触媒のエナンチオマー立体官能基(ヒスチジル基)の立体配置に依存し、Dーヒスチジル基を有する触媒では、D体基質優先の、Lーヒスチジル基を有する触媒ではL体基質優先の立体選択性が認められたので、高選択性の発現には触媒官能基であるヒスチジル基と、基質エステル部の配向性が極めて反応に都合のよい「鍵と鍵穴」のごとき空間的適合をもつことが必要であることが推定できた。
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