1.ペプチドファンの合成 アミノ酸としてヒスチジン (His) かあるいはプロリン (Pro) を、又ジ アミン単位としてピペラジンを用いた大環状化合物 (ペプチドファン) を合成した。 三ないし四段階でペプチドファンを合成する手法を開発したが、その全収率は極めて 低かった。 2.ヒスチジン含有ペプチドファンの加水分解触媒機能 ヒスチジン含有ペプチドファンを加水分解触媒として用い、P-ニトロフェニ ルエステル類の加水分解に対する触媒機能を検討し、以下の結果を得た。 (1) 長鎖 アルキル基を有するエステルに対してのみ触媒効果を示す。 (2) pH-速度関係か らヒスチジンのイミダゾール基が触媒官能基として、作用しており、イミダゾール基 の解離定数 (pKa) は11.5であった。 (3) 触媒機作は酵素様飽和動力学に従 い、以前に代表者らが合成した環状ペプチドの作用機作に類似していることが分かっ た。 3.プロリン含有ペプチドファンの基質取り込み能 プロリン含有ペプチドファンは水及び有機溶媒に対し、低い溶解性しか示さなか った。そこでメタノール中における生体物質8D-グルコース、L-フェンルアラニ ン) 及び金属 (CuII) との相互作用を調べたが、相互作用は観られなかった。こ れはメタノール中においては、基質取り込みの駆動力となる、疎水性相互作用、静電 的相互作用等が働かないためであろう。 4.結果と今後の展開 わずか数段階で加水分解触媒機能を有する大環状化合物 (ペプチドファン) の 合成法開発に成功したが収率が極めて低かった。その主な原因は、中間体の溶解性が 低いためと考えられる。そこでこの点を改良し合成収率を上げる必要がある。
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