本研究ではミセルを形成している状態での、UV光照射による両親媒性化合物の重合と得られた重合体の諸特性を検討している。 本年度は主として、末端に二重結合を持つ新しい長鎖脂肪酸ナトリウム類の合成とそれらの重合を試みた。まず、金属リチウムをテトラヒドロフラン中でアリルフェニルエーテルと反応させてアリルリチウムを合成し、これを6-ブロモヘキサン酸エチルと反応させ、ついでこれをアルカリ加水分解することによって8-1ネン酸ナトリウムを合成した。次にアリルリチウムをヨウ化第1銅と反応させてジアリル銅リチウムを合成し、これをソルビン酸エチルと反応させ、ついでアルカリ加水分解することにより5-メチル-3、7-オクタジェン酸ナトリウムを合成した。 この2種の脂肪酸ナトリウムの水溶液の電導度を測定し、それらの濃度に対するプロットの折れ点から、それぞれの第1および第2CMCを8-1ネン酸ナトリウムについては0.08および0.22mol/l、5-メチル-3、7-オクタジェン酸ナトリウムについては0.10および0.26mol/lと推定した。 この2種の脂肪酸ナトリウム水溶液にUV光を照射して重合を行い、重合体の収量およびその重合度を測定した。いずれの脂肪酸ナトリウムについても、低濃度では重合体がほとんど得られないが、それぞれの第1CMC以上の濃度では、濃度の増加に従って重合体収量が著しく増大する傾向が認められた。これらの収量は10-ウンデセン酸ナトリウムの重合の場合に比べるとはるかに少なかった。また、得られた重合体の重合度は8-1ネン酸ナトリウムについては約8、5-メチル-3、7-オクタジェン酸ナトリウムでは約6であった。これらの値は10-ウンデセン酸ナトリウムの重合体の重合度約12よりかなり小さい。このような低い収量および小さい重合度は今回合成した脂肪酸ナトリウムの脂肪族鎖が短かいことに由来すると推定される。
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