本課題の研究に於いて、まず次の様な測定解析システムの製作を行なった。1.128チャンネル4ビットのハードウエア型コリレーターの作成2.回転拡散係数の独立した精密測定の為の電気複屈折測定装置の作成3.上記システムとマンコンとの接続・インターフェース及び解析システムの作成である。1.は既にほぼ完成し、細部のチェックを行なっている。2.は半屈曲鎖のスペクトル解析に不可欠のもので、テスト試料での測定も終り、ほぼ所期の性能を達成している。3.についてもほぼ完成しこれ迄と比べ数段グレードアップした解析能力を得ることができている。次に、この間の研究について述べると、1.ラットの皮膚から抽出した単分散コラーゲンによる動的光散乱スペクトルの半屈曲鎖としての解析、2.電導性ポリマーについて電導性と鎖の剛直性の相関の検討・半屈曲性の特性解析、3.N-置換ポリアクリルアミドの主鎖骨格構造と鎖の統計的性質との関係、4.N-置換ポリアクリルアミドを用いたコイル・グロビュール転移のメカニズムの解析、5.CDNAの動的光散乱スペクトルの解析、6.リン脂質2分子膜ベシクルの相転移、等である。1.ではラットに病変を導入し単分散コラーゲンを得る事によりスペクトルの詳細な定量的解析が可能となり、半屈曲鎖の理論の精密な検証がなされた。2.では電導性を示すポリマーの形状についての分子レベルでの知見を得た。3.では特異な感熱特性を示すこの種の高分子の基礎的特性解析を行い、これを基にして4でその感熱挙動の機構がコイル・グロビュール転移として捉えられる事を示し、同時にその転移の理論の検討を行なった。5.では単分散CDNAを用い環状高分子としての特性を鎖の屈曲性との関連で検討した。6.では疎水性鎖の構造及びその転移とベシクルの形状変化から転移のメカニズムを検討し、これ迄の結果を整理した。これらにより、鎖の屈曲性が分子内運動あるいは分子集合体の運動に及ぼす影響について総合的な知見を得る事ができた。
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