研究概要 |
近年, 医療用材料として需要が急増しているポリプロピレン製器具は, おもに^<60>Co-γ線を照射することによって滅菌処理されるが, 同時に高分子自身の放射線化学反応により酸化劣化分解し, 材料の脆弱化が起こる. これを防ぐことを目的として, ポリプロピレンの成形加工条件の違いや, 放射線照射に起因するモルホロジー変化の特徴を調べ, これと耐放射線性との関連について検討した. 1.本年度に備品として購入した偏光顕微鏡を用いて, 溶融成形時の温度やポリプロピレン主鎖に含まれるエチレン量などが異なる各種のポリプロピレンのモルホロジーを観察し, ラメラ結晶が凝集して生じる球晶の径などを定量化した. 2.原料の溶融状態からの徐冷および急冷条件下で加工したポリプロピレンフィルムに, 空気中でγ線を照射して得られたサンプルの, 降状応力, 破断点伸び, あるいは破断点強度などの引張り特性を調べた. その結果, 小さな擬六方晶からなる急冷フィルムは, 大きな球晶(単斜晶)を含む徐冷フィルムとくらべて臨界線量(破断点伸びを半減させる照射線量)が大きく, 放射線によく耐えることが明らかになった. 3.未照射および照射フィルムのモルホロジーの特徴を偏光顕微鏡下で観察し, X線回折, 赤外線吸収スペクトルや密度のデータと総合して考察した. その結果, ラメラ結晶間を連結するタイ分子が放射線酸化反応により切断されて再結晶化するために体積が収縮して高密度化が起こり, 材料が劣化することがわかった. 4.急冷加工フィルムのモルホロジーと放射線劣化特性におよぼすアニール効果, ならびにγ線照射フィルムの酸化劣化挙動におよぼす暗中放置効果について検討した.
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