これまでの研究を通じて、ポリプロピレン材料の耐放射線性がラメラ結晶や球晶構造、隣接ラメラ結晶間を連結するタイ分子鎖などのモルホロジー因子によって大きく影響されることを明らかにしてきた。本年度は、主として室温膨潤比の測定を行い、各種ポリプロピレンフィルムのγ線照射前における初期物性と耐放射線の相関について考察した結果、下記のことが明らかになった。 1.ポリプロピレンは沸騰パラキシレンに完全に溶解するが、室温条件下では結晶相は溶解せず、パラキシレン分子の浸入によって非晶相が膨潤する。ポリプロピレンフィルムが25℃に保ったパラキシレン中に浸漬したところ、室温膨潤比は浸漬時間と共に増大し、フィルム厚が2mm以下であれば、48時間以内に恒量値に達した。 2.ポリプロピレンフィルム内の球晶径が大きいものほど、室温膨潤比は急激に減少した。コポリマーフィルムの場合、球晶径がほぼ等しいホモポリマーフィルムに比べ、室温膨潤比は小さかった。 3.平均直径が10mm以下の微細な球晶を含むフィルムの降伏応力は、ホモポリマーおよびコポリマーに関係なく、室温膨潤比が大きくなるほど小さくなるという一義的関係が得られた。平均直径が10μmより大きい球晶を含み、降伏点に達する以前に破断するフィルムの室温膨潤比は小さかった。このときの破断点強度一室温膨潤比の関係は、徴細球晶フィルムにおける降伏応力一室温膨潤比曲線の延長線上につながった。 4.破断点伸び残率を50%に低下させる照射線量を尺度とする耐放射線性は、ホモポリマーおよびコポリマーのいずれのフィルムも、室温膨線性は、ホモポリマーおよびコポリマーのいずれのフィルムも、室温膨潤比が大きいものほど著しく増大した。 5.ポリプロピレンの耐放射線性は、球晶内部のラメラ結晶間を連結するタイ分子鎖の長さと数によって決まることが結論された。
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