医療用ポリプロピレン材料の放射線滅菌に伴って副次的に発生する力学的性質の劣化を防止する方法の確立を目的として、劣化挙動に及ぼすモルホロジーの影響を調べ、下記の成果を得た。 1.アイソタクチックポリプロピレンのX線的結晶構造および球晶サイズは熱成形条件によって著しく異なる。溶融状態からの冷却速度が速くなるほど擬六方晶が生成し易く、徐冷すると単斜晶が成長する。一般に、急冷するほど微細な球晶を生じ易い。 2.ポリプロピレンフィルムにγ線を照射すると、破断点伸びは照射線量と共に逆S字曲線を描いて減少する。破断点伸びが照射前の1/2に低下するときの照射線量(臨界線量)は耐放射線性の尺度となる。 3.単斜晶構造を含むフィルムは放射線に弱く、擬六方晶構造を多く含むフィルムほど耐放射線性は著しく向上する。 4.照射前の降伏応力が小さいフィルムほど臨界線量は大きくなり、放射線によく耐える。降伏応力が等しい場合、ホモポリマーフィルムの臨界線量はコポリマーフィルムのそれより大きい。 5.球晶の平均直径が10μm以下のフィルムでは、球晶径の減少と共に降伏応力が急減し、耐放射線性は著しく向上する。球晶径が10μm以上のフィルムは降伏点に達する以前に破断し、球晶径の増大と共に破断点強度は減少する。 6.25℃のパラキシレン中にフィルムを48時間浸漬して求めた室温膨潤比は、球晶径の減少と共に急激に増大する。 7.微細な球晶を含むフィルムの場合、室温膨潤比が大きいものほど、照射前の降伏応力が一義的に増大し、臨界線量は大きくなって耐放射線性が著しく向上する。
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