本研究は、具体的課題として次の二つのテーマを設定し、それぞれ成果を挙げることができた。 (1)光散乱セル室、送液装置並びに光学系の設計・製作 既設の動的光散乱装置は6つの散乱角度のみで測定が可能であったので、本研究のために新たに10°から150°まで5°おきの、計29個の散乱角度での測定が可能である光散乱セル室を製作した。測定において最も問題となる迷光は、径の小さな電子顕微鏡用のピンホール、光ファイバー等を新たに用いることにより解決できた。製作した送液装置・フローセルを用い予備測定を行い、10^<-2>ml/minの低流量速度から、GPC測定において実際に使用されている流量速度1ml/minまで広い範囲にわたって溶液を脈動なしに送れることを確認した。 (2)本研究に関連した基礎データの集積 希薄溶液、準濃厚域及び濃厚域において実験研究を行い、多くの新しい知見を得た。本研究と特に関係が深いと思われる二、三の結果について述べる。 高分子からみ合い網目中での高分子の拡散は、セグメント摩擦係数ζ及びからみ合い点間分子量Meの二つのパラメーターを用いれば、同一の関数形でDのC、M依存性を記述できる。特に高からみ合い領域(M/Me》1)では、D〓(Cζ)^<-1>M^<-2.5>となった。一方低分子量高分子一溶媒中では、RouseないしはZimm型の拡散機構で高分子は拡散する。ブロック共重合体の微視的相分離形態を利用して、拡散高分子の慣性半径と同程度の球状障害物が規則的に格子上に並んだ溶液構造中での拡散は、拡散高分子が障害物の格子間隔より小さければRouse型の自由拡散であり、大きければ、からみ合い網目中より一層強く運動の制限を受けることが明らかとなった。
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