研究概要 |
最近盛んに合成されている高弾性率繊維は, その大半がπ共役系科学構造を有する. 従って, これらは電気物性の面でも非常に有望と考えられる. 本研究は, 外部から引張り応力を働かせた状態での高分子の振動および電子状態変化を, 分光学的に追跡し, 力学的性質, 電気的性質と構造との関係を明らかにすることを目的としたものである. 共役系高分子としては, 唯一手で扱うことのできる大きさのポリマー単結晶にあるポリジアセチレンおよび超高弾性率繊維のケブラーを選び, 自作した延伸装置にセット, 荷重の大きさを変化させながらスペクトルを測定した. 外部応力下での電子状態変化は, 振電相互作用を通じて, 振動スペクトル, 中でも特に骨格共役系に関する振動バンドに影響する. たとえは, ポリジアセチレン単結晶の場合, 赤外線スペクトルの中でC-C伸縮モードが張力印加とともに大きく低波数シフトレ, また, ラマンスペクトルのC=C伸縮モードと側鎖振動モードに対応するバンドが, その波数と同時に相対強度を変化させていった. これらは, 骨格のC=C, C=C, C-C結合間のπ共役電子状態および, これらのπ共役系と側鎖との間の共役が, 張力による原子変位に伴って変化していったことが原因として生じたものと解釈された. そして, 振動カップリングの立場から定量的に解析し, 張力による構造変化との関わりを明らかにすることができた. また, ヤング率の引張り応力依存性をこれらのデータを基にして理論計算し, 実測データと比較検討した. ケブラーの場も, ベンゼン環とアミド基との間のπ共役が外部力場によっ変化し, それが骨格モードのシフトとして観測されることを見出した.
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