研究概要 |
炭酸ガスパルスレーザーを高分子フィルムに照射すると短時間に高振動励起状態まで多光子的に励起され高温状態となる. この際炭酸ガスレーザーの照射エネルギーが高分子フィルムにどのような影響を与えるか調べた. 分子量の異なる2種のポリメタアクリル酸メチル(PMMA)にレーザーフルーエンスを変化させ重量減少率を求めた. レーザーフルーエンスが1J/cm^2以上になると分解が始り, 重量減少率は低分子量に比較して高分子量で大きい. この原因を調べるため, 残存分子量の測定を行った. 低分子量(Mn=4.6×10^4)ではほとんど分子量の低下が認められなかったが, 高分子量(Mn=10^6)では著しい分子量の低下が起った. 定常加熱法により200°C〜350°Cの温度範囲で重量減少の時間変化から分解速度定数を求め, 同時に分子量の低下度を求め比較を行い分解のメカニズムを調べた. その結果, 高分子量ではランダム切断が起り, long unzipping反応が, 低分子ではshort unzipping反応が起きている. この結果はレーザー照射の場合にも適用できる. 反応速度の温度依存性からアーレーニウスプロシトを行い, PMMAの分解の活性化エネルギーを求めた. 高分子量では48kJ/mol低分子量では140kJ/molなる値が得られた. 高分子量の小さい分解の活性化エネルギーは主鎮に頭一頭結合という弱い結合が重合過程で生ずることによる. PMMA中にスピロピラン分子を分散させたキャストフィルムにCO_2レーザーにて短時間に一定温度に到達させ, 次いでNd-Yagレーザーにてメロシアニン型に変化させ, その吸収強度の時間変化から反応速度αを求めた. この熱消色反応速度は反応の乱れの程度を示すパラメーターであり, レーザー照射下で求めた値と定常加速熱下で求めた値とでは異なる反応速度定数が得られた. この差異はレーザー光照射下での断続的加熱効果が分子運動の緩和を引き起こした結果によるものかどうかについて明かにする為照射条件の検討を行った.
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