研究概要 |
重水素化した試料の合成が遅れているので, 重水素化していない試料を用いて下記3に示すように添加塩を加えられたときの中性子小角散乱(SANS)測定から高分子セグメントの二体及び三体クラスター積分の値B1及びB2を求めることを目的とした. 1.単分散ポリスチレン及び重水素化ポリスチレンを購入し, それらをVinkの方法でスルホン化し, ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(NaPSSH)を得た. スルホン化度は約93%である. また重水素化しポリスチレンスルホン酸ナトリウムも合成中である. 2.NaPSSHを三種の添加塩濃度CSの重水溶液の溶媒に溶解したものを試料とした. SANS測定には高エネルギー物理学研究所のKENS-SAN装置を用いた. 測定温度は40°Cとし, 購入したデジタルプログラム温度調節計で温度調節した. Cs=4.17M, 高分子濃度Cp=0.0243g/cm^3の散乱強度I(q)のKratkyプロットは, 0.04≦q≦0.1(A^<-1>)の範囲で, 明瞭な平坦部を示すことから, この塩濃度のΘ点は40°C近傍と考えられ, その折れ曲がり点q^*から, 平均持続長19〓を得た. この値から回転半径を求め, 高分子が絡み合う濃度を見積もったところ, 0.044g/cm^3となったので, このCpは希薄領域であることがわかった. 3.半希薄濃度領域のI(q)の角度依存性は小角範囲でLoretz型となったので, 相関長ξを求めた. 各CSの値におけるξのCp依存性は貧溶媒系の高分子非電解質半希薄溶液に適用できるMoore理論と良く一致したので, B_1, B_2を求めた. これらの値に対する静電的相互作用の寄与を調べるために, Debyeの遮蔽長K^<-1>を計算した. B1はK^<-1>とともに負から正の値へと単調に増加し, 約1.5〓(Cs=42M)でΘ点となった. B_2もK^<-1>とともに増加した. これらの挙動はK-1の増加とともに円筒状高分子電解質セグメントのcorrelation tubeの直径の増加によって説明できる.
|