研究概要 |
1.天然緑色植物光合成触媒の主体となるMg-クロロフイルの光酸化還元機能のモデルとなる化学物を全合成により得ようとする試みとして, 従来当研究室で取扱って来た天然ポルフイリンの代りに, メソーテトラカルボキシフェニポルフイリンを出発物質として, これを種々の鎖長を有するジアミンと反応させて, 長さの異るアミド結合によりポルフイリン環を連結させて先ず二量対を合成し, ついで残りの-COOH基をビニル基1ヶを有するベンジルクロライドによりエステル化し, 重合性ビニル基を有するポルフイリン二量体を合成した. これら鎖長の異なるアミド結合[-CONH(CH_2)_n-MHOC-]で連結したポルフイリン二量体のポルフイリン単位環当りの吸光係数(Soretバンド)蛍光強度はそれぞれn=1〜2に極小値と極大値を有し, いずれも, ポルフイリン単量体に比較して, 明らかに変化し, 連結ポルフイリン環同志の相互作用が確認された. Mg原子をポルフイリン環中心に導入したMg-ポルフイリンについても同様な現象が見出された. なお, 平行して, 最終光酸化還元触媒に導入可能な酸化還元系についても検討を行っており, 所期の知見を得ている. 2.3, 3'-二置換基を有するアゾベンゼンとして, イミノ二酢酸等を反応させて, 3, 3'-位にそれぞれ1〜2ヶの-COOH, -OH基を含むものを合成し, また, 別に重合性置換として, ビニル基を含む置換基を付したものを合成した. こゝに合成されたアゾベンゼン類について, 光トランスーシス異性化反応を行わせ, 立体構造の変化による金属キレート化能の変化, 即ち重金属取り込み能の変化を検討した. その結果, Co(II), Ni(II), Cu(II), Zn(II)の添加によりアゾベンゼンの光トランスーシス異性化速度は影響を受けることが判明した. 項目1, 2共に63年度においては, 高分子化の効果を検討する予定である.
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