| 研究概要 |
近年ヒンダード・アミン系光安定剤(HALS)がプラスチック類の光安定剤として最も多量に使用されるようになったにも拘ず, その作用機構については多くの問題が残されている. 本研究はHALSの真の作用機構を明らかにする目的で, 先ずHALSの作用状態を明確化することから研究を開始した. 1.HALSとフェノールの相互作用:HALSの従来提案されている作用機構(ラジカル〓提作用, ハイドロバーオキサイド分解作用, 消光作用)について検討したが, HALSの優れた効果を説明するのに不十分であった. しかしHALSとフェノールが共存すると, 例えば前者が後者の数モル%存在すると, フェノールがあたかも1.5倍存在したかのような酸化防止効果を示すことがわかった. このことはHALSが検討した濃度範囲において殆んど酸化防止能を有さないことを考えると全く驚くべきことであり, この事実からHALSの機能がフェノールの酸化防止作用によって生じたキノンからのフェノールの再生にあるという全く新しい仮説を立てた. 2.HALSとキノンの相互作用:HALSとキノンはそれぞれ単独で酸化防止能を殆んど示さないが, 両者の共存が劇的な酸化防止能を示すという新しい事実を発見した. キノンの効果は, キノン核の置換基が電子吸引性ほど著しく, 光〓〓〓濃度範囲のハイドロパーオキサイドがHALSとキノンの相互作用を促進すること, すなわち酸化防止能の発現を高めることがわかった. 3.HALSの作用機構の推定:HALSとキノンの相互作用による酸化防止能の発現は, キノンからのフェノールの再生という仮説を指示するものである. しかし本年度においては, キノンから再生したフェノールの単離とその同定に至らなかった. これに関する詳細な検討およびフェノール再生に対する最適条件の確立などを行ない, HALSの作用機構を来年度に明らかにしたい.
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