天然漆の主要成分のうち炭素数18のアルキル基、アルケニル基をもつウルシオールの合成について、前年度の研究結果を基礎にして研究を行った。ベラトロールを出発原料にする場合、側鎖置換基を別途に作成しベラトロールの3位に導入したのち、Withy反応で側鎖を伸長後、腹メチル化を行うのが従来の方法であった。しかし反応条件が比較的苛酷であるため、側鎖不飽和部分が開裂、重合する。本年度は側鎖に不飽和基を有するウルシオールの合成に重点をおいた。炭素数18のトリエン、ジエン等の導入について、フラン化合物を出発原料にする場合と、ヘラトロールを出発原料にする場合の二つの方法を検討した。フラン化合物として2-フランカルボン酸を選び、これをメチル化したのち、電解酸化し、Pd-Cを用いて水素添加してメチルα-(2.5ジメトキシテトラヒドロユーフロイルアセタートとし、これにハロゲン化アルキルを作用させ、ウルシオール前駆体すなわちメチルα-(2.5ジメトオキシ-2-フロイル)α-アルキルアセタートを得る。これを加水分解して目的物を得る。この方法の問題点はハロゲン化の場合であり、溶媒の種類、ハロゲン化アルキルの種類が収率に影響を与える。非プロトン性極性溶媒は収率を向上するが、同時にO-アルキル化物の生成も自ら、またハロゲン化アルキルはハロゲンの種類で収率が異り、沃化物が良い結果を与えた。 ベラトロールを出発原料にする場合は、ベラトロールのメトオキシ基をアセトキシ基に変えることで、水酸基の再生が比較的温和な条件で行い得る。このため、側鎖の副反応を防止することができる。ベラトロールに炭素数8の側鎖を導入したのち、Withy反応で炭素鎖を伸長するが生成する側鎖の主体構造と反応条件は更に検討を重ね、基礎データの集積が必要であることが明らかとなった。
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