天然漆の主要成分であるウルシオールの成分に関して、二つの方法を中心に研究を行った。すなわち、 (i) ウルシオールお側鎖部分をすでに分子構造の一部として有する前駆物質を合成し、この分子の他の部分の構造を変化させてカテコール核とし、前駆物質より一挙にウルシオールを得る方法、 (ii) カテコール核をキフ物質に予め別途作成したアルキル基やアルキレン基を導入し、更にWitting反応により炭素鎖を伸長すると同時に立体配置を天然のウルシオールに一致させる方法である。 (i) の方法についてはアセチルフラン誘導体を出発原科にし、電解酸化、水素添加、分子内アルドール縮合により、2-アルカノイル-2、5-ジメトキシテトラヒドロフランとし、これを塩化処理して目的物を得る方法を見出した。また (ii) の方法ではベラトロールに1、8-ジブロモオクタンを用いてベラトロールの3位にアルキル基 (オリチル基) を導入の後、DMSO中で酸化し、更にWitting反応で炭素鎖の伸長と立体配置を調え、目的物を得る方法を開発した。以上62年度の研究結果を基礎にして63年度は前駆物質の収率の向上をアルキル化反応を中心に検討した。またフラン化合物として出発原科をメチル、2フロエートを使用した。アルキル化反応は使用する溶媒、ハロゲン化アルイル等により収率が異る。非プロトン性極性溶媒は収率を向上させるが、同時に0-アルキル化反応を伴う。ハロゲン化アルキルは〓化アルキルがすぐれてきた。 (ii) の方法はベラトロールの脱メチル化が側鎖アルキル基、アルキレン基を開裂する反応条件が要求され問題であったが、メトオキシ基をアセトオキシ基に変換することで、水酸基の再生が、比較的温和な条件で行うことができ、側鎖部分の副反応を抑制できることが明らかになった。尚、反応条件の検討、原科の選択などに研究をつみ、基礎データを蓄積することが必要である。
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