アリルアンモニウム塩として、主としてジアリルジメチルアンモニウムクロリド (DADMAC) およびテトラアリルアンモニウムクロリド (TAAC) を取り上げ、それらの重合挙動を環化重合およびゲル化の観点から検討し、非水系でのジビニル重合とも対比考察した。得られた知見の概要は次の通りである。 1) DADMACの環化重合挙動を究明し、i) 環化重合性が非常に高い (環化定数Kcは600mol/L以上) 、ii) ポリマー中の環構造は5員環より成る、iii) 重合速度および生成ポリマーの重合度は通常のアリル重合に比して著しく高いことなどを明らかにした。また、アクリルアミド (AA) との共重合ではDADMACの環化重合性は抑制を受けず、AA仕込み量80mol%でゲルの生成が認められた。さらに、DADMACをジアリルアンモニウムクロリド (DAAC) に変えて検討した結果、ゲルの生成は顕著であり、かつ膨潤比が6000以上にも達するハイドロゲルが得られた。 2) トリあるいはテトラアリルアンモニウムクロリドの重合性がDADMACに比してかなり低いことを見い出し、動力学的に検討した結果、退化性連鎖移動がTAACの重合で生起し易いことを明らかにした。 3) TAACのゲル化挙動は、その一次鎖長が大きく、かつ構造単位当り1個以上のペンダントアリル基を持つにもかかわらず、ゲル化が遅く、また生成ゲルの膨潤比が大きいという、非水系のジビニル重合と大きく異なることが明らかとなった。そこで、この点を静電反発効果および立体効果の観点から考案した。すなわち、強電解質であるNaclの添加によってゲル化は促進された。一方、TAACよりも立体的なこみ合いの小さいDADMACおよびDAACとの共重合では、それらの仕込み量の増加とともに立体効果が減殺され、ゲル化は促進された。
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