熱交換器の高効率化には、使用流体として空気(低プラントル数流体)より、水などのような液体(高プラントル数流体)の方が伝熱係数が大きく有効であり、さらに高効率化を図る目的で流路に乱流促進体を設置する受動的伝熱促進法を用い、伝熱促進のメカニズムを調べた。 まず、可視化のできる短形流路を作成し、流体に高プラントル数の電解液を用い、乱流促進体は3種類の形状を用いた。流路壁面での物質移動係は、酸化還元系の電極反応を利用して実測し、促進体のない流路のそれとの比より、伝熱促進の度合いを調べた。その局所の促進のメカニズムを知るために定性的にはアルミトレーサー法による可視化実験、定量的には速度分布、せん断応力分布、乱流強度分布を実測し、双方を対比させて検討を行った。 その結果、乱流促進体の種類およびその配置形状によって流れ挙動や速度分布が異なるが、一般的に伝熱促進は促進体が壁に密着している場合、流れが促進体上部からの剥離によって壁面に再付着した時の乱れに起因して促進される。促進体と壁面間にクリアランスがある場合は、クリアランスの大きさによって流れ挙動は当然変化するが、促進体直下の少し下流側と、促進体長さの3〜7倍の範囲の所で伝熱促進が見られる。これら2ヶ所の促進のメカニズムは、乱流強度分布およびせん断応力分布との対比から、促進体直下での促進は噴流によって境膜が薄くなることに起因し、促進体間の伝熱促進は液の撹乱による乱れが主として起因していることがわかった。 また、省エネルギー(高性能化)の観点から、装置設計上問題となる流体摩擦損失を実測し、伝熱促進と対比させて性能評価をも試みた。
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