〔1〕ポリ(イソブチレン-alt・co-無水マレイン酸)とポリビニルアルコールのブレンド膜を合成し、Na^+、Mg^<2+>、Ni^<2+>の能動輸送と濃縮分離実験を行った。その結果はイオン交換平衡と膜内有効拡散係数に基づく理論濃度変化よりも濃縮の進展とともに低下する。これは濃度差に従った逆拡散に起因するが、二成分系での濃度最大値の比として与えられる選択分離度は初期流束の比と近似的に一致した。このことから、ポリマー膜の濃度分離度や選択性は、擬定常状態が成立する透過実験による初期流束の測定値から評価できることを見出した。 〔2〕工業用イオン交換膜Neose-pta CM-1によるアルカリ及びアルカリ土類金属イオンの透過機構を検討した。透過速度は二つのモデル、すなわち膜に一液界面でイオン交換平衡が成立するモデルと、イオン交換反応速度を考慮した非平衡モデルに基づき解釈された。前者の平衡モデルでは1価イオンの膜内拡散係数と平衡定数から説明できたが、2価イオンの透過には膜表面と膜内での反応速度定数をモデルパラメータに含める必要がある。この事実から、陽イオン交換膜を通してのイオン透過過程においては膜と水溶液界面は非平衡状態にあり、速度過程が重要になることを示唆する。 〔3〕ポリマー膜への機能性付与の一環として、エタノール優先透過膜の合成法をプラズマ重合法で検討した。シリコーンオイルキャスト膜とそのプラズマ表面処理膜、各種シロキサンをモノマーとしたArプラズマ重合によりポリプロピレン多孔質膜上にグラフト化させた膜、市販のポリジメチルシロキサン膜(Silastic膜)の各種の膜を用いて、エタノール水溶液の浸透気化実験を行った。エタノール選択性α及び分離度Sと透過流束に及ぼす液組成・温度・圧力差の影響に基づき、膜特性を評価した。αとSは表面処理膜とシリコーン膜では同じ値を得たが、プラズマ重合膜は小さい。一方、流束は重合膜の方が表面処理膜の約10倍大きい値を与えた。
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