充填層直径38Cm、高さ3mのパイロットスケールの装置に、工業用融媒として用いられている三葉形押出し成型粒子を充填し、半径方向液流量分布を測定した。この結果、液供給流量が少ないとき、充填層高によらず出口における液の半径方向流量分布は少なかった。液供給流量が多くなるにつれ、層頂部に設けた液分配器が良好でなく、分配器直下で半径方向液流量の分布が見られたが、充填層高を大きくするにつれ、層出口では均一に流出するようになった。これは、用いた工業用触媒粒子が多孔質であり、毛管吸引力による液移動が半径方向液流量分布の均一化に寄与するためと思われる。 上記の方法は層出口における液流量分布を測定するものであり、層内部の流動状態を把握するため、医療用のX線CT装置を用いて内部を可視化した。可視化の方法は、液流中にX線造影剤を注入することによってCT値を変え、X線撮影像に濃淡をつけて観察を可能にした。この結果、部分的に流れの悪い所も見受けられたが、全体としてはほぼ半径方向に均一に流れ、層出口で測定した流量分布と同一の傾向にあった。また、充填層の壁部では空隙率が大きいために、この部分の流量が多い、いわゆる「壁流」の存在が憶測されてきたが、本研究によれば特に著しい「壁流」は認められなかった。 局所空隙率分布がある場合の充填層内の流れを解析するために、充填層の圧力損失を求めるErgun式が局所的にも成り立つとする考えに基づき、単相流の流動を数値解析した。その結果、粘性支配の流れでは空隙率の大きい部分への偏流が著しく、慣性支配の流れでは偏流が少ないことがわかった。局所液滞留率を空隙率変化に組み込み、本解析法を拡張した気液並流充填層内の気体流れの解析の可能性が見い出されたが、これは今後の検討課題として残された。
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