1.光学識別能のあるセルローストリフェニルカルバメートをシリカゲルに担持したカラム(担持率0、10、20、30wt%)のクロマト分離特性を研究した。昨年度は保持容量(k')および異性体の分離係数(α)という吸着平衡特性について研究したが、本年度は物質移動特性である理論段相当高さ(H)について研究し、平衡と移動特性を総合した分離能(Rs)の予測まで検討した。 2.基本物性が入手しやすいヘキサンとイソプロパノール(10vol%)を溶離液として、液体クロマトグラフィーによるHの測定を数種の溶質についておこなった。その結果、Hの測定値はKnoxの式によってうまく相関されることがわかり、さらに充填剤の粒子内物質移動低抗について次の知見を得た。1)使用した大孔径シリカゲル(直径20μm)の屈曲係数は2〜3である。2)ポリマーの担持率が増加すると粒子内物質移動低抗が大きくなり、30wt%担持カラムではOwt%のものに比べ10〜20倍に増加する。これは【○!1】シリカゲル内の屈曲係数がポリマー担持により増大したか【○!2】シリカゲル表面に付着したポリマーが圧着されてみかけ上粒子径が大きくなったかのいずれかと推定される。 3.二酸化炭素を溶離液とする超臨界および亜臨界クロマトグラフィーでは、前項の液体クロマトグラフィーに比べてHが小さくなり、カラム効率がすべて上昇した。測定したHはKnoxの式で相関することができ、溶質の拡散係数が40℃、10MPaで約4.5倍、25℃、10MPaで約3倍大きくなると推定できる。また、メタノールを添加すると若干効率がおちる。 4.光学異性体の分離能(Rs)はHとk'によって予測でき、ヘキサンよりも超臨界二酸化炭素を用いる方が約2倍だけ分析時間を短縮できる。本研究を通じてセルロース誘導体を担持した充填カラムのHとk'、αに及ぼす因子が明らかとなり、分離能の制御に関する知見が得られた。
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