研究概要 |
昭和62年度は下記の2実験を行い, 以下のような新しい知見, 成果を得た. 1.往復動ロール渦による物質移動促進に関する実験 平行な棒列を物質移動界面に平行に往復運動することにより, タイムスケールおよび長さスケールの明確な界面更新渦運動(周期的ロール渦)を発生することに成功した. この渦運動により促進された物質移動は, Sh=0.88Re^<1/2>Sc^<1/3>(H/λ)^<-0.60>なる実験式にまとめられた. 渦発生器の往復運動のある周期範囲では, 往復運動と同期して物質移動界面が更新され, 渦流本体のマクロな速度スケールAfと長さスケールλは正確に物質移動界面の速度勾配変動の乱れ強度√<S^^->^2/S^^-と渦波長Λと対応していることがわかった. 2.カルマン渦による伝熱促進に関する実験 縮流型スロットノズルから発する2次元噴流のポテンシャルコア中に一本あるいは2本の円柱を平行に設置して, 下流に垂直に設置した伝熱板上の促進効果を実験により解明できた. 淀線上の伝熱に関しては円柱を二本設置した時, 促進効果が一番大きいこと, 円柱を一本設置した時は後流の影響で促進効果が一番低かったことなどが明らかになった. 伝熱板の伝熱係数分布に関しては, 円柱を一本設置した時, カルマン渦の直接的な衝突により周辺部の伝熱係数が非常に大きくなるが, 淀線付近は衝突速度が低下しているため小さな伝熱係数を与えること, 円柱を二本設置した時は淀線付近で大きな伝熱係数を与えるだけでなく, 二円柱の後流渦の衝突により周辺部の伝熱係数も促進されることなどが明らかになった. 特に円柱を二本挿入する場合は伝熱を促進するだけでなく, 伝熱係数を一様化するような制御性もある点で有利であるが, ノズル・伝熱板間距離が大きくなるとその効果が弱くなることもわかった.
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