研究概要 |
アルギン酸のゲル粒子を捕集剤とする希土類元素の多成分混合物の選択分離を目的として研究を行い, 現在までに次の諸点が明らかになった. 1.希土類元素の選択 軽希土(La,Nd, Sm)から重希土(Dy,Yb)までを対象として吸着・脱着実験を各元素ごとに行ったところ, これら元素に対してアルギン酸ゲルが有効な捕集剤であることが確認できた. ゲル相からの希土元素の脱着は0.1kmol/m^3程度の希薄な塩酸水溶液でも完全に起こり, ゲルの希土元素捕集能は吸着・脱着を数回繰り返しても全く低下しなかった. 2.吸着平衡 各種の希土類元素に対する分配比は, ゲル相の交換基濃度と液相の水素イオン濃度の比の三乗に比例した. また分配比に及ぼす溶液のイオン強度(0.3kmol/m^3以下)の及び温度)15-35°C)の影響は認められなかった. これらデータを固液間分配平衡理論に基づいて解析し, イオン交換容量, 分配平衡定数, 分離係数を決定した. アルギン酸ゲルの交換容量は, 希土元素の種類に無関係に一定値をとり, 市販のイオン交換樹脂と比べて少しも遜色がなかった. 分配平衡定数は, 軽希土元素間では相互に大差がなかったが, 重希土では原子番号が大きくなるほど減少した. これらの結果から, 現状では軽-重希土間の平衡分離の可能性がけがある. 今後, 液相に錯化剤を共存させて各希土元素の有効濃度(錯形成していない希土濃度)を変化させるなどして, 各元素間の分離係数の向上をはかる方法について検討していきたい. 3.吸着・脱着速度 液相中の希土元素濃度を種々変えて測定された撹拌槽での総括イオン交換速度は, 液槽撹拌回転数, ゲル粒子径の影響を受けなかった. 従ってイオン交換過程では, 操作条件に無関係に液相やゲル相での物質移動抵抗が無視できて, アルギン酸と希土イオンの交換反応が律速段階となることが明らかになった. 今後は, 反応機構を釈明し, 各希土元素対する反応速度定数を求める予定である.
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