研究概要 |
1.天然高分子アルギン酸のゲル粒子によって、液相中に溶存する希土類元素(ランタン、ネオジム、サマリウム、ジスプロシウム、イッテルビウム)をよく捕集できることを明らかにした。また、ゲル相に捕集された希土類元素は、希薄な塩酸水溶液(0.1kmol/m^3程度)で容易に液相に回収できた。 2.軽希土(La,Nd,Sm)から重希土(Dy,Yb)までを対象として、ゲル相ー液相間の分配平衡実験を、錯化剤無添加の場合および錯化剤として乳酸を添加した場合について行った。分配比の実測値を固液間平衡理論に基づいて解析し、各元素の分配平衡定数、分離係数、イオン交換容量を決定した。分離係数は、溶液のpHや乳酸の添加量の増大に伴って向上した。特に重希土間の分離係数については、アルギン酸ゲルは溶媒抽出法での抽剤TBPやイオン交換法での溶離剤HEDTA(25℃)などと同程度であった。さらに、イオン交換容量に関しても、ゲル粒子は市販のイオン交換樹脂と比べて遜色はなかった。 3.回分式の攪拌槽で、ゲル粒子による希土イオンの捕集速度を測定した。捕集速度は液相攪拌数や粒子径の影響を受けなかったことから、液相やゲル相での物質移動抵抗が無視でき、希土イオンとアルギン酸との交換反応が律速段階となることが判明した。速度デ-タに及ぼす反応成分(希土元素、水素イオン、官能基)濃度の影響を合理的に説明できる反応速度式を提出した。 4.ゲル粒子を充填したカラムに、乳酸を添加した二成分Yb-Nd混合液を通液し、破過曲線を実測した。Ybの溶出に比べて、Ndは相当遅れて溶出してくることから、両元素を完全に分離できるが、相互分離は通液速度の減少や溶液のpHの増大によって一層改善された。これらの実験結果は、上述の反応速度デ-タを用いて求めた破過曲線の計算値とほぼ一致した。一方、ゲル粒子に捕集された希土元素は乳酸溶液(pH=1.4)の通液で速やかに溶離され、濃縮溶液として回収できることがわかった。
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