本研究は液々異相系界面における活性物質の濃度を把握できるin-sutuな測定法を確立することを目的として、レーザー光散乱法による界面張力波(分子の熱運動によるゆらぎとこれを抑制しようとする分子間力によって誘起される)の波数、振動数、減衰率の検出を試みたものである。研究は、1)界面張力が界面波の諸特性値と関数関係にある、2)界面張力は物質の界面濃度とGibbsの式によって関係づけられる、を基本的な考え方とし、1)純粋な有機相と水相よりなる2相系での界面張力波の検出、2)抽出剤(界面活性物質)を含む有機相と水相よりなる2相系での界面張力波の検出、3)データ解析と界面張力の推定、4)界面濃度の推定、にそって進められた。界面張力波の検出に対して、光ヘテロダインによって増幅された信号波の1)スペクトル解析、および2)実時間での自己相関をとる、の方法がとられた。いずれの場合も、レーザー光の強度、主光と散乱光の強度比を種々変えて実験を行い、界面波が基本的に減衰波で、2)の方法が有効であることが明らかにされた。レーザー出力150mW、回折格子(3.5μm)の第一参照光1/51200減光の条件で、水-nヘプタン系に対して、波数51600 1/m、振動数3447KHz、減衰率2480 1/sec、水-ベンゼン系に対して、波数516001/m、振動数3875Hz、減衰率19201/secの界面張力波が検出された。現在、上記実験計画3)の段階にあり、界面張力の推定のための解析法について検討している。 現段階において、実験計画4)「界面濃度の推定」には至らなかったが、界面張力波検出に対する実験技術を確立することができた。今後、データ解析法を確立すると共に、本測定法を活性物質を含む異相界面系に適用し液々系活性物質の界面濃度の測定法を確立すべく努力する所存である。
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