鉄鉱石の高炉還元技術は完成度の高いものであるが、高温操作を必要とし、熱源や還元剤としてのコークスも、主に強粘結性の瀝青炭に限られ、資源や価格の面で制約を受けつつある。したがってコークス以外の劣質燃料資源による鉄鉱石の直接還元技術の確立が待たれている。褐炭・リグナイトなどの低品位低炭化度石炭は、資源的に豊富でしかも比較的廉価であり、スチームガス化の活性が極めて高い。本研究はこの点に着目し、低品位石炭と鉄鉱石の機械的混合物を原料として、石炭のガス化と生成する水素や一酸化炭素による鉄鉱石の還元を一段で行おうとするプロセスの可能性を、実験的検討より明らかにしたものである。主な供試石炭は、オーストラリヤ産Yallourn炭(褐炭)とカナダ産Highvale炭(リグナイト)の2種で、鉄鉱石はオーストラリヤ産のNewman(Fe_2O_3)とチリー産のRomeral(Fe_3O_4)である。流通式熱天秤反応器による半回分操作の基礎実験並びにギヤー式固体試料定速供給器を備えた実験室的小型回転キルン反応器の試作と本装置による回分・連続操作実験を行った。化学分析に基づく鉄鉱石の完全還元に必要な石炭の固定炭素量を、両者の理論混合比と定義し、石炭と鉄鉱石の混合割合の指標とした。Fe_2O_3鉄鉱石では理論混合比の約5倍の石炭を混合し、石炭ガス化のための送入スチーム濃度を3%以下と低くし、固体の装置内滞留時間を長くする等の操作条件を選ぶことにより、900℃以下でも鉄鉱石の金属鉄への還元と石炭ガス化による合成ガスの製造を同時に一段で実現できることを連続操作実験で確認した。低炭化度石炭は包蔵水分を比較的多く含む点も、低いスチーム濃度が望ましい本プロセスにとっては有利であり、湿り石炭を積極的に利用し、また生成ガスの一部を再循環して送入ガスの還元力を高める操作も、本プロセスの改良法として充分に期待できることなどを明らかにした。
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