研究概要 |
代表的な醸造食品であるエタノール・酢酸・乳酸などの醗酵生産においては, これら代謝産物が顕著な生産物阻害をもたらし従来行われてきた回分醗酵では生産物の蓄積と共に生産菌の増殖・代謝活性が抑制され醗酵生産に多大な制約が強いられる. 本研究はこれら阻害作用を受ける醗酵プロセスに対し, 乳酸醗酵を例にとり, 阻害物質の除去・菌体の長期再利用による生産性の向上を計かるべく菌体分離循環型バイオリアクターの開発とその有用性の検討を目的とした. 1)耐熱性・耐薬品性に優れ, かつ濾過抵抗の少ない膜材料として, コーディオライトを用い円筒状に焼結加工した分離膜(内径17mm, 外径30mm, 長さ240mm, 孔計0.1μm)を作成しその特性につい明らかにした. すなわちクロスフロー型濾過において濾過速度を支配する膜近傍の物質移動係数は, 従来用いられていた高分子膜によるものに比べ約10倍大きな値を示し, かつ乳酸菌の分離効率も極めて高かった. また1本の円筒状分離膜により通常の回分醗酵における乳酸菌の分離除去・再利用への利用には300torr.の圧力差を与えることで充分に可能であった. 2)1)で明らかにした分離膜モジュールを組み込んだ繰返し回分醗酵用バイオリアクターシステムを用い, 1回の仕込み糖量を100g/e(乳酸の生成は約80%)として菌体の循環再利用による繰返し操作を行なったところ, 菌体濃度は順次高濃度に保たれ, 5回目の繰返し操作では約26g/lに達し, 阻害作用を緩和しつつ行なった回分操作によって乳酸菌の生育・醗酵能は良好な状態で維持されていることが明らかとなった. しかしながら繰返し, 回分操作に対して菌体の増殖速度は若干抑制される傾向を示しその最適操作条件の検討および濃縮された他の代謝産物の影響の検討も必要と思われる.
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