植物集団の高密度ストレスに対する適応戦略を解明するために、カラシナ(Brassica juncea Czern.et Coss)の2品種を高密度ストレス条件下(1万粒/m^2;H型)と対照の高密度ストレスのない条件下(1個体/m^2;C型)で継代した。 世代を経るとともに、H型とC型との間に差異が観察されるようになった。H型はC型に比べて、種子サイズは大きいが、種子数は少なく、早く開花した。また、高密度条件下では、H型はC型に対して強い競争力を示した。 高密度ストレス適応戦略を、種子サイズの変異とその競争力との関連を明らかにすることにより検討した。種子サイズに対する選抜により、H型とC型ともに集団内に種子サイズの遺伝変異を保有していることを明らかにした。 高密度ストレス条件下の混植・単植実験により、大きな種子からの個体は小さな種子からの個体より競争に強いが、同じ種子サイズのH型とC型では、H型が競争に強いことが明らかになった。H型の競争力には、種子サイズ以外の要因も関与していると考えられた。 大きな種子は小さな種子より発芽が遅延するが、その傾向は、C型がH型より顕著であった。また、種子サイズは初期生育量に影響を与えたが、その効果はH型では、その後の生育にも表れたが、C型では、観察されなかった。H型では、高密度ストレスに対する適応的な形質の組合せが生じていると考えられた。 以上の結果から、高密度ストレス条件下では、競争力の強い個体が選抜されるが、その競争力には、様々な形質が関与しており、H型ではそれらの形質に選抜効果が働き、適応的な形質間の組合せが生じたと考えられた。そして、それらの形質の中で、種子サイズは、遺伝率が高いので、C型との間に遺伝的分化が顕著にあらわれたと考えられる。
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