前年度と別の実験区についてカナマイシン(Km)抵抗性を持つタバコに接木した正常タバコ(SR 1)からKm抵抗性の変異体、22-1を得た。この22-1の自殖及びSR 1との検定交雑による次代にはKm抵抗性個体のみが出現したので、22-1はKm抵抗性遺伝子をホモに持つ個体であったことが判った。前年度に得た7個体のKm抵抗性植物の遺伝分析を行った。これらの内6-2-1及び6-2-2は次代でKm抵抗性植物が出現しなかったので、変異体ではなかった可能性がある。6-2-3、6-2-4、6-2-5は単因子支配の分離比に適合し、1個のKm抵抗性遺伝子を持っていることが判った。3-1はG_1S_3及びG_1S_1B_1S_1世代までKm抵抗性とノパリン合成能について遺伝分析を行った。Km抵抗性のものはノパリンを合成しており、Km感受性のものはノパリンを合成していなかった。分離比はメンデル遺伝に従わず、不規則であった。9-1はG_1S_3世代のKm抵抗性の遺伝分析を行ったが、"漏出型"とKm抵抗性個体を分離する系統でも播種培地のKm濃度を上げる(300-500μg/ml)と全てが"漏出型"になった。これらの変異体についてサザンハイブリダイゼ-ションによってDNAの分析を進めている。 また、β-glucuronidase(GUS)及びKm抵抗性の遺伝子を持つタバコに接木した正常タバコ(SR 1)10個体の様々な部位の組織切片を作り、組織化学的にGUSの活性を観察した。1個体の生長点と他の1個体の3つの蕾の葯及び子房の維管束でGUS活性が検出された。更に同様の実験を進めて接木当代での穂木の変化を詳しく解析すると共に、GUS活性の見られた植物から種子を取り、後代も検定している。 これまでの実験で、形質転換体上に接木された非形質転換体に、形質転換体と同様な形質発現がみられた。それらの後代検定により、その遺伝的表現は一様でないものの、その中で台木から穂木へDNAが移行したとみられる現象を見いだした。これは貴重な成果である。
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