高等植物の異種遺伝子を導入する上で、細胞組織培養を用いない簡便な方法を開発するために、接木法を適用し実験を試みてきた。まずだいきには、すでにカナマイシン抵抗性遺伝子とノパリン合成酵素遺伝子がそのゲノム中に組み込まれたタバコ形質転換体を用い、穂木には正常な非形質転換体を用いて、メント-ル接木した。穂木の朔果より得た33000以上の自殖種子をカナマイシン硫酸100μg/mlを含む培地上でスクリ-ニングしたところ、6個体のカナマイシン抵抗性植物を得た。これらのkm抵抗性個体はその後の後代検定により、km遺伝子のその相同せんしょくき体の一方に1個だけ持つもの、2つの相同染色体にホモの状態で持つもの、及び2こ以上(5個)の独立したkm遺伝子を持つものに分類された。また、それらのうちの一変異体は、不完全なkm抵抗性を示す漏出型(leaky)変異体であり、しかも他の変異体が他のもう一つのマ-カ-であるNos活性を全て持っているにも関わらず、その活性を持っていなかった。これらの接木形質転換体、及びそれらの後代植物よりDNAをなかった。さらに、それら接木形質転換体及び後代植物からDNAを抽出して、kmおよびNos遺伝子をプロ-ブにしてSouthern blot分析をしたところ、これらがそれらのマ-カ-遺伝子を持っていることは明かであり、かつ複雑なpatternを示した。以上の事から、接木によっていす遺伝を維管束を通して導入することのできることを示したが、そのプロセスをさらに詳細に明らかにすることや、転換効率を向上させることなどがさらに求められている。
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