研究概要 |
本年度は栽培大麦のヘテローシスに関して以下の5種の試験を行った. 1.二条品種のダイアレル交雑試験:日本, トルコ, エチオピア及びヨーロッパの二条大麦10品種の総当り交流(片面)を行い, 親とF1を秋播き栽培してF_1に現われるヘテローシスの程度を調べた. その結果平均的にもっとも多収で多くの形質について組合せ能力の高かったのはエチオピアの1系統であり, またフランスの1品種は特定組合せ能力が高く, これらは過繁茂の状態で生産性を高める点が注目された. 2.東アジアの六状品種におけるヘテローシスの調査:今までの研究から朝鮮半島の六条品種との雑種で顕著なヘテローシスが見出された. そのため本年はこれら六条品質と他の六条品種と交雑を行い, 試験材料を造った. 3.初期成育とヘテローシスの関係調査:今までの研究でヘテローシスの顕著なトルコ, 日本, 朝鮮半島の品種間8交雑のF_1と両親を用い, 自然条件下における初期成育の生長解析を行った. その結果, 幼植物の乾物量ではヘテローシスは顕著で, 成熟時の子実収量とほヾ平行的な傾向を示したが, NARやLARなどの大小は必ずしも一致しなかった. 4.短稈遺伝子の交雑組合せ検定と遺伝子解析:短稈品種同士の15交雑のF_2を戸外栽培して稈長に関する解析を行った. その結果, こゝで用いた材料については短稈が何れも劣性遺伝子によって支配されていることがわかった. また, 密穂遺伝子(劣性)の多面的作用が稈長に出現した. 5.疎植, 密植間のヘテローシス比較:並性品種同士及び渦性品種同士の2組合せについてF_1と両親を疎植及び密植えして(3反復乱塊法)ヘテローシス出現を調べた. その結果, 収量に関しては並性品種間のF_1では疎植, 密植性に有意な差は出現せず, 渦性品種間の雑種F1では疎植した場合にヘテローシスが大きく現れた.
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