ヘテロ-シスに関する組合せ検定の早期評価を行うため。前年度にはF_1と両親とを用いて幼植物の生長と成植物の子実収量について、ヘテロ-シス発現に関する両者の関係を調べた。本年は特性の異なる品種18を用い、当地方の標準播種期(11月中旬)に播種し、3月6日から7〜8日置きに4回収穫し、成熟後最終的な収穫を行って、乾物量の推移及び相対生長率(RGR)、純同化率(NAR)、葉面積比(LAR)の変化を調べた。その結果4回収穫した幼植物の乾物量の間にはそれぞれ高い正の相関が認められたが、それらと最終的な子実収量との間には有意な相関関係はなかった。生長解析による3種の指数のうち、NARは幼植物の乾物量と正の相関を示し、しかも生育が進むにしたがって相関係数が高まる傾向を示した。RGR、LARについては、幼植物の乾物生産及び成植物の子実収量とも特別の関係は認められなかった。なお、RGRはNARとLARの積によって表わされるが、これらの間ではRGRとNARの相関は有意であり、大麦の幼植物の相対生長にNARが大きく寄与しているといえよう。 F_1の稈長の短稈化をはかるため優性短稈遺伝子の検索を行った。長稈品種ゴ-ルデンメロンと、世界各地の短稈品種83とのF_1の稈長の変異を調べた。その結果優性短稈遺伝子は見出されなかったが、トルコやヨ-ロッパの品種の中には稈長のヘテロ-シスに関して変異が大きく、北アフリカやエチオピアの品種は小さかった。また密穂遺伝子の多面作用によって短稈化をはかるため、前年度までにトルコの短稈品種Malatya5の持つ密穂性についてF_2を分析してきた。本年はF_3の分析を行い、密穂性が優性遺伝子によって支配され、稈長に影響することを確かめた。 細胞質雄性不捻に関する捻性回復遺伝子の検索は、世界各地の品種80について行ったが、強力な捻性回復遺伝子は見出されなかった。
|