研究概要 |
ダイズの脂質は, パルミチン酸, ステアリン酸, オレイン酸, リノール酸リノレイン酸の各脂肪酸から構成され, なかでもリノレイン酸は3.5%から12.5%までの品種による多様な変異が認められている. 本研究はこのリノレイン酸含量の遺伝様式を知る目的で, 含量を異にするダイズ10品種間の正逆交雑によるF_1種子についてダイアレル分析を行なった. リノレイン酸の生成量は, リノレイン酸とリノール酸含量の比によって示すが, 最も高い品種の石原大豆の17.6%, 最も低い品種の青地の13.1%までの変異幅であった. リノレイン酸含量の分散分析の結果, 一般組合せ能力(a)のみが1%水準で有意となり遺伝子の相加的効果が認められ, 他の特定組合せでの効果(b), 正逆交雑による一般組合せ(c)と特定組合せ(d)はいずれも有意とは認められなかった. 正逆交雑の平均値から各系統の分散(Vr)および各系列内の個々の値と非共通親との共分散(Wr)を求め, Wr-Vrの均一性を検定したところ, Wr-Vrの系列間の有意差はなく, 非対立遺伝子間相互作用が認められない. すなわち, 相加, 優性モデルが適合するとして各遺伝パラメーターを推定した. リノレイン酸含量の優性の方向は2(F_1平均-親平均)=-0.940となり, リノレイン酸含量の低い方向に優性を示すとともに, 平均的優性度√<H_1/D>=0.586で不完全優性であると判断される. リノレイン酸含量を支配する優性・劣性遺伝子の総数はゼロを示すことから, 各遺伝子はほぼ均一に分布する. また, その有効因子数はHaymanの方法から0.7, Naiの方法から3.5となり, 1〜4個が関与するものと推定された. 遺伝率は広義では41%, 狭義では31%と低かった. 青地, オリヒメ, 春日在来での遺伝子作用は, 不完全優性で, 相加的であり, リノレイン酸含量を低下させる.
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