大豆の種子中の脂肪酸は、パルミテン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸の5種類からなっている。なかでもオレイン酸とリノール酸は含量も多く、おおよそ80%を占め、リノレン酸は必須脂肪酸であるが不飽和度が高く、脂質の変敗の大きな原因となり、できるだけ含量の低い品種が望まれている。したがって、大豆品種BayにX線の25KRを照射して、リノレン酸含量に関しての突然変異の誘発をこころみた。 M_2世代の2006個体の脂肪酸組成について、各脂肪酸含量の広がりは親品種Bayに比べて大きく、放射線照射による脂肪酸含量の変異の拡大が認められた。リノレン酸含量の変異について、親品種Bayのリノレン酸含量の広がりが8.4%から10.8%までであるのにたいし、照射集団では7.0%から18.4%までの低含量から高含量まで広い変異幅の拡大が認められた。特に18.4%と高リノレン酸含量となった変異体B739はBay品種の9.4%に比べて略2倍の高含量であり、他の脂肪酸組成について、パルミチン酸とオレイン酸含量の減少が認められた。一般にリノレン酸含量は、開花期から成熟期までの気温に大きく影響される。高温での成熟はリノレン酸含量の減小を、低温での成熟はリノレン酸含量を増加させる。M_3世代について、B739が高いリノレン酸含量の突然変異体であることを確認する実験を行った。B739と親品種を開花期を異にした環境におき両者の脂肪酸含量を比較したところ、両者の含量の差は常に明瞭であり、B739は高リノレン酸含量の突然変異体であると認めた。
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