研究概要 |
施肥量が少なくても収量がさほど減少しない水稲品種の特性を, 地下部形態や機能の面から検討した. 供試品種は, 陸羽根132, 撰一, 農林3, 十石, 朝日, 双葉, 竹成, 南京11, 桂朝2, 来敬, 密陽23, Calesse76, Saturn, Rancaraloである. 栄養生長期における根系形態の変化を, 根箱試験により検討した. 根系占有面積(根箱中の), 根系開度には, 明確な品種間差が認められ, 農林3は狭い角度で密な状態で根系が形成され, 陸羽根132は, 逆に疎の状態で広い角度で根系が形成されていることが, 特徴的に認められた. 来敬は農林3と, 密陽23は陸羽132と似た形態を示していた. 地上部乾物量(葉身+葉鞘+稈), 茎数には品種による有意差が認められないことから, これらの品種間差異は地上部生育依存ではなく, 地下部独自の形態的差異と考えることができる. これは, ガラス室内の常温条件での実験であるので, 外部環境とくに地下部温度が変化した場合について検討した. 同一方法による実験を地下部温度18°C条件下(水槽内を大型クーラーで調節, コイト土壌温度調節装置使用)において行った結果, 常温条件下の結果と同じく, 農林3は狭い角度で密な根系を形成し, 陸羽132は, 広い角度で根系を形成していた. よって, 品種による根系形態の違いは, 地下部水温にはほとんど影響されないと考えられる. 根および葉身部の全窒素含有量には有意な品種間差は認められなかった. 品種による根系形態の違いが遺伝的な減少であるかどうかを検討するための一つの方法として, 正逆交雑によるF_1種子の採種を行い, 来敬/陸羽132:15粒, 陸羽132/来敬:14粒, 密陽23/農林3:24粒, 農林3/密陽23:28粒のF_1種子を得た. 63年度に後代の形質分離を調査する予定である. 土壌条件および栽培技術と根系形態との関係を検討するため, 富山, 石川各地および山形県庄内地方の多収穫水田の根系調査を行い, 栽培管理, 土質によっても根系形態に違いがあることを観察した.
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