研究概要 |
差動トランスを利用したダイズ茎径の膨張と収縮を連続的に測定する装置を組み立てた. 戸外で連続に測定するために様々な予備実験を繰り返し, これまで他の1年性草本(トマト, キュウリ, メロンなど)と同様, ダイズの茎径は膨張する時と収縮する時があり, しかも日変化のあることも追認した. このことは, 同装置は正常に作動し, 茎径の膨縮計測機器として十分利用できるものと考えられる. 土耕, ポット栽培ダイズを供試して, 温度25°C, 湿度70%の温室条件下で, 開花後, 子実肥大開始期〜子実肥大完了期(1988年1月〜3月)まで茎径の膨縮経過を連続測定した. その結果, この期間, 温室をとりまく外部気象要因, 植物自体の生長に応じて茎径は様々な変動を示した. 1日当りの変動量には差がなかったが, 成熟整合品種(オリヒメ)と成熟不整合品種(刈系73号)の日最大変動量(日最大茎径-日最小茎径)はオリヒメが約60μ, 刈系73号が約20μと差異が認められた. このことは, この生育ステージはダイズの栄養生長はほぼ完了しており, 生殖生長期で, 茎の肥大生長はほぼ停止していることから, この差異は植物の成熟への移行の結果であり, 品種の成熟整合性程度の差異によるものと考えられる. しかしながら, 一般に植物の茎径の膨縮の変動は, 内的環境(光合成, 呼吸, 蒸散養水分の移動, 転流, 体内水分など)と外的環境(温度, 湿度, 日射量, 照度, 風, 土壌水分など)および品種, 病虫害, 生育量, 生育ステージなどの要因が複雑にからみあい, 総合されて示されるものである. しかし, ダイズの茎径の膨縮と成熟整合性程度とがどの要因に強く影響されているか不明でしかも, この種の実験データが少ない現状では, 個々の要因との相互関係も必要であるが, 多数の事例を蓄積し, 解析することがより重要であると思われた.
|