研究概要 |
1.不和合性の原因解明ならびにF_1獲得の効率化向上: まずオウトウ品種サトウニシキを母親としてコマメザクラとの交配を2209花, シナミザクラとの交配を651花行なった. 結果率は2.1%と8.6%で低かったが, 得られた種子をNitch培地で胚培養を行い, Xコマメザクラで44個体の胚から4個のF_1を, Xシナミザクラで56個の胚から6個のF_1を得ることに成功した. これらの組合わせにおける不和合の原因を解明する目的で花柱基部より珠孔に寄った部分を観察する為, 酵素処理による解離を試みた. その結果, 単独処理では供試した7種の酵素中ドリスラーゼ, オノズカーR_<10>, ペクトリアーゼが良好な解離を示した. 2種混合処理の比較ではマセロチーム+ペクトリアーゼ, ペクチナーゼ+ドリスラーゼ, ペクトリアーゼ+メイセラーゼの各組合せにおいて良い解離を示した. しかし花粉管の識別は必ずしも容易ではなかった. 2.種間交離F_1植物の確認: 今年度の交配で得たF_1植物実生個体に関する限りは, オウトウメマメザクラ, Xシナミザクラいづれの組合せにあってもF_1植物の葉上に, 父本系統の形質である毛茸の存在が認められ, 両親ゲノムが確実に混っていることが推定された. 3.ソフテックスの検討: サンプルを持参の上メーカーを訪れ, 軟X線透視の技法につき予備的な試みをしてみたが内果皮の密度が高く, よいX線像が得られなかった. 胚珠の内部, 初期胚の発達状況の把握が目的なので, むしろソフテックスに代って, 蛍光顕微鏡による解剖観察の方が今の段階では正確な把握が可能と思われる. 来期は蛍光装置を用いて, 受精〜初期胚の発達を段階を追って調査したい. またこの装置はキナクリン染色により染色体の観察にも威力を発揮するので, 今年根端採取がうまくゆかずに観察できなかったF_1雑種の染色体を, 来期は根端に代って茎頂の分裂組織を用いて観察したい.
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