オウトウのわい性台木の開発を目ざして、オウトウ、マメザクラ、シナミザクラ、オクチョウジザクラを用いて種間交雑を実施した。その結果少数ではあるが、オウトウを母親に用いた場合雑種が得られた。しかしオウトウ以外の種を母親に用いた場合には全く結実しなかった。胚培養法は種間雑種を得る上で有効な手段である。そこで胚培養に関る条件を検討した。初めNitchの固形培地で培養を開始し、途中8月以降nitchとMs両区に分けて液体培地を交換した所、固形培地において成育が鈍ってきた胚が生長を続けた。種子の熟度と胚培養結果の関係を検討した実験では、可食期種子に比べ過熟期種子は休眠にも陥らず、むしろ好ましい生育を示した。不和合の原因を解明するため雌ずいの内部を解剖学的に調査してみた。その結果、不和合組合せのコマメザクラ×サトウニシキの組合せでは、花粉は柱頭上ではかなりよく発芽しているにもかかわらず、花柱の奥の方には花粉管が伸びてゆかない。酵素処理は雌ずい組織をバラバラにして組織内の花粉管や受精の様相など見やすくするための処理であるが、雌ずいの部位によって酵素に対する反応が異なっており、花粉管の通り道である子房の内部は、一般に解離しにくかった。また解離しても花粉管を十分観察することは出来なかった。パラフィン切片法で胚のう内部も観察したが、形を成した胚は極めて少なかった。次にF_1雑種の形態調査について、前述のオウトウを母親にして得られたF_1雑種個体は、殆どすべて個体が〓表上に毛を有している。こは母親のオウトウにはない特徴であることから、雑種は確実に両親ゲノムが合体して成立したものと考えられた。これらのF_1を圃場で三年間育て測定したデータをまとめたところ、正逆交雑間で差があり、マメザクラを母親にしたF_1は、逆交雑のF_1と比べ生育が劣っている。
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