カキ属植物(Diospyros)のうち、わが国に古来より栽培されているカキ(D Kaki)は、その来歴から多数の品種群を形成し、多様に系統化がなされてきた。また、カキの起源についても中国渡来説や日本原生説などがあり、一定した見解が得られていない。そこで、カキの系統分化や類縁関係を知るために本研究を行った。 1.カキ226品種(韓国・中国・台湾原産を含む)の諸形態形質について既往の資料から重要94形質を得て、これを数量化して数量化理論第3類による多変量解析を大型コンピュ-タを用いて行った。その結果、‘次郎'群、‘富有'群‘御所'群及び‘西条'群など主要経済品種群は、明らかに他の品種とは異なった品種群として座標上位置した。また、韓国・中国・台湾原産の品種は2つを除き、ほぼ同一の一大集団化したグル-プ内に位置した。 2.形態形質のうち、カキ属植物の類縁関係を知る上で重要と思われる、子房及び果実表面、とくに毛じの密生状態に注目して走査型電子顕微鏡を用いて詳細に194品種を比較観察した。その結果、子房及び果実表面の毛じの密生状態には品種間にかなりの変異が認められ、わけても九州地方を原産地とする品種群に毛じが多く密生するものが多いのが認められた。一方、中国・四国地方の原産地とする品種群は、毛じが少ないものが多く分布することが明らかとなった。 3.アイソザイム及びFIPを用いた化学分類学的手法による解析を試みたが、FIPについては現在に到るまで明確な分析手法を確立できず、今後さらに検討する予定である。一方、アイソザイム分析は、エステラ-ゼ、6PG、パ-オキシダ-ゼ、PGMの計4酵素の葉抽出材料で、種間、品種間の類別が可能と思われるバンディレグパタ-ンを得た。
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