ニンニク(garlic)を始めとしたアリウム(allium)属植物のブドウの芽に対する休眠打破効果、打破の有効成分及び作用機構について検討した。1.ニンニクの塗布処理は多くのブドウ品種に対して、石灰窒素やメリットよりも大きな休眠打破効果を示した。気浴処理でも同様の効果が認められた。ニンニク以外のアリウム属植物のうちニラ、キニラ(黄化処理したニラ)、ラッキョウ等にも休眠打破効果があり、特にキニラとラッキョウの効果が大きかった。効果は塗布処理だけでなく気浴処理でも認められた。これらのことから、ニンニクを始めとしたアリウム属植物の休眠打破の有効成分は揮発性物質と思われた。2.ニンニクの揮発性物質として硫化アリル、2硫化アリル、3硫化アリル、4硫化アリルが含まれ、特に2硫化アリルと3硫化アリルの含量力が多かった。ニラやラッキョウではこれらのイオウ化合物は少なく、これよりも沸点の低い物質が主であったが、それを同定することはできなかった。イオウ化合物のいくつかについて、塗布処理と気浴処理によりブドウ挿し穂に対する休眠打破の効果を調査した。塗布処理では2硫化メチル、3硫化アリル、2硫化アリルで、また気浴処理では3硫化アリル、2硫化アリルで休眠打破の効果が大きかった。これらのことから、ニンニクの休眠打破の有効成分は揮発性のイオウ化合物である2硫化アリルと3硫化アリルであると推察された。ニラやラッキョウの有効成分はこれとは別の揮発性物質であるが、それを明らかにすることはできなかった。3.休眠打破のメカニズムを明らかにするために、処理後発芽に至るまでの挿し穂内のいくつかの生理活性の変化を調査した。休眠打破処理により、枝梢内のサイトカイニン活性が高まったが、芽の呼吸活性やエタノール含量及び枝梢中のABA含量には大きな変化はみられなかった。
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