研究概要 |
1.微生物の観察 光学顕微鏡で罹病果実を観察し, 維管束及びその付近の柔組織中に微動する小顆粒を確認し, これを顕微鏡ビデオ装置で録画した. 走査型電顕でもその存在を確認した. 微生物様の小顆粒は, 特定の篩部細胞及び隣接する柔細胞の原形質膜の内側に存在し, 塊状のものと膜面に沿って散在するものとがある. 形はほぼ球形で, 大きさは変異に富み約0.2〜5μmである. 2μm程度以上のものは, 多数の小顆粒がアグリゲイトしているように思われた. 中には2〜3個に分裂していると思われるものもみられた. 現在, 透過型電顕で観察中であるが, 像が不鮮明であるためマイコプラズマ特有の構造を確認するに至っていない. 専門家の指導を受ける予定である. なお, 結果枝基部や果梗節の異常肥大組織からは管状のバクテリアが観察された. 2.微生物の培養 縮果病の罹病組織からの微生物の分離培養を試みた. 培養に成功したと報告されているスピロプラズマ用の培地や果汁, 樹液なども用いたが, 確実に増殖していると思われる培地は検索されなかった. なお, 果蒂をDIFCO社製のNA培地で培養すると組織周辺にコロニー様の模様が生じており, ブドウの茎頂から得たカルスに罹病組織を接種するとカルスは壊死するので, この培地やカルスを電顕で観察する予定である. 3.病原性の確認 罹病果実からの搾汁液を超遠心にかけ, 12,000×G沈澱分画を樹上の果実や培養した果実に接種したが, 病徴は発現しなかった. 培養中の果実片に罹病組織を接触させると, 果実の維管束は褐変したが, 樹上でみられるような病徴は現れなかった. また, カルスに接種するとカルスは壊死した. 現在, ブドウ茎頂から無菌苗を作出し, 人口気象器で育成している. これらの苗は, 温室内に網室を設け, 無菌樹では縮果病が発現しないこと, 接き木接種で感染すること, 及び伝搬させる昆虫を特定することなどの為に使用する予定でる.
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