1.微生物の培養と回収.開花後45日〜完熟期の果粒や果ていの組織片をアルブミン加用のリケッチャ培地に置床すると、比較的高率に微生物のコロニ-が形成された。コロニ-形成には新鮮組織が必要であったが、継代培養はできず、透析膜を界しての増殖もなかった。固形培地からの微生物様顆粒の回収は困難であったが、液体培地では遠心分離により回収された。軟化した果粒の汁液からも同様の方法で顆粒の回収が可能であった。なお、この顆粒がMLOであるかどうかの確認はなされていない。 2.電顕観察.透過電顕による組織の観察では、ミトコンドリアが変性したものと考えられる内部構造の不明な球形像は観察されたが、微生物と断定できる像は観察されなかった。樹液の遠心分離による沈澱画分中には、バクテリアとともに明らかに膜を有するミクロンオ-ダ-の微生物様顆粒が観察された。しかし、内部構造は不明である。走査電顕では、果ていや果粒基部の中心維管束近辺の細胞中に大きさ及び形状の変化に富んだ顆粒が観察された。培養したコロニ-からは表面の凹凸の著しい、軟化果粒汁からは表面の滑らかな顆粒像が得られ、これらは組織中でみられたものとほぼ同等の大きさであった。さらに出芽を思わせる像も多数散在した。 3.病原性の確認.茎頂培養によって育成したブドウ樹を網温室中で裁培したところ、縮果障害は全く発生しなかった。一方、試験管内で培養苗の挿し穂基部に微生物様顆粒を接種すると、発根や生育が大きく抑制された。しかし、同苗や実生苗の茎に傷を付け接種したものでは何ら障害は現れなかった。外見的に健全と思われる果粒の横断面に接種した場合は褐変が著しく、判定が困難であった。樹上の果粒へ接種した場合は、縮果障害の発生率において対照区との間に有意な差がなかった。
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