研究概要 |
ヘテロシス育種によく利用される細胞質雄生不稔性の本体を分子レベルでの理解を深めるために細胞質ゲノム構造的変異を調べた. Raphanobrassicaの雄性不稔性に関与したゲノムを明らかにするため, 最初にRaphanus(2倍体・正常種)とBrassica(2倍体・正常種)の黄化芽生えから常法によりミトコンドリア分画を調製し, クロロホルムーフェノール法とGENECLEAN法(フナコシ薬品)により, mt-DNAを抽出・精製した. アガロース電気泳動(1.0%)による分析の結果, それらの両DNA調整物にはサトウキビ・テンサイなどの雄性不稔性系で見出された数kbの小環状DNAは検出できなかった. 両DNA調整物を制限酵素HindIIIで分解すると, 20以上のバンドが検出され, 異なるバンドの存在が認められた. 現在, 他の制限酵素(EcoR1とSal1)を使った分析を行っている. 両者の構造的相違性を明確にした後, Raphanus4倍体の正常種と雄性不稔性系の比較-Raphanobrassicaの正常種と雄性不稔系を検討し, 細胞質DNAの構造変異と雄性不稔性MSとの相関関係を明らかにしたい. また, 他の細胞質ゲノムである葉緑体DNAを緑葉から調製し, 同様に酵素分析を行い, MSとの関連性を調べる予定である. ニンニクは完全不稔で花粉も胚のうも形成しないが, 世界各地の収集により, 稔性系統とともに雄性不稔系統も発見したので, 交雑により新しい雄性不稔系統を作出し増殖をはかっている.
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