はじめに、根重増大率と空洞発生との関係をみるために栽植密度を変える実験を試みた。7月下旬に源助ダイコンの種子を株間10cmには種し、は種後10日目ごとに根重と空洞発生について調べた。生育初期に株間を30cmに広げた区ではは種後60日目の根重も、根重増大率(30日目に対する60日目の根重の倍率)も大きく、空洞発生根も多くなった。しかし、生育後期に30cm株間にした区では60日目の根重も根重増大率も小さく、空洞発生根も少なかった。一方、ここ2年間行ってきた高地温処理実験あるいは低地温処理実験について上述した根重増大率を求めてみると、空洞発生根が多発する条件下で生育した根部の根重増大率は大きく、発生しない条件下のものは小さかった。 次に、空洞発生の品種比較をするため、発生しやすい品種として源助および山田ダイコンを、発生しにくい品種として吸込二年子ダイコンを、低地温と高地温下で栽培した。いずれの品種も高地温で低地温の約2倍生育が抑制された。空洞発生根は発生しやすい品種では高地温下で多く、低地温下で皆無であったが、発生しにくい品種では地温にかかわらず極めて少なかった。また、根部を中心部と外側部とに分け糖含量をHPLCで測定したところ、中心部の糖濃度は発生しにくい品種では高地温下で外側部の2倍以上であるのに比べ、発生しやすい品種では地温にかかわらず外側部と同じであり中心部が肥大していると考えられる。空洞の発生しにくい品種では組織学的にみると中心部における導管相互の間隔が狭いが、発生しやすい品種では間隔が広く、このことからも中心部が肥大していると考えられる。 まとめると、生育初期または中期の生育量に対し、生育後期の生育量が大きいと、また根部の中心部が肥大しやすい品種で空洞が多発するものと推察された。
|